先日、寝る前にX(旧Twitter)をダラダラ見てたら、こんな図解が流れてきました。
「基本的信頼は、大きな家の土台のようなもの」
要約するとこんな内容。
…え。
七夕ちゃん、いま1歳1ヶ月なんですけど。
ちょうど今、まさにその「基礎工事」の真っ最中じゃん!と焦りました。
そこからスイッチが入って、「より意識して、愛情いっぱいに育てよう」「なるべく毎日『大好きだよ』って言おう」「頑張って怒らないようにしよう」…って決意したんですが、同時にこうも思ったんです。
これ、うまくいったかどうか確認する方法ってあるの?
だって、結果が出るのは20年後とかですよね。それまで「大丈夫かな…」って不安なまま過ごすの、しんどすぎる。
というわけで、調べました。かなりガッツリ調べました。結論から言うと、確認する方法はちゃんとあるし、思ってたより気楽に構えて大丈夫でした。
そもそも「基本的信頼」って何なの?
まず用語の整理から。
「基本的信頼(Basic Trust)」を提唱したのは、精神分析家のエリク・エリクソンという人。
エリクソンは人の一生を8つの段階に分けて、それぞれの時期に乗り越えるべき課題があるよ、という理論を作りました。有名な「アイデンティティ」って言葉も、この人が広めたものです。
で、その一番最初の段階(0歳〜1歳半ごろ)の課題が「基本的信頼 vs 不信」。
分かれ道:まわりを信じられる ⇔ 信じられない
乗り越えると身につく力:希望(この先もなんとかなる、と思える力)
分かれ道:自分でできる ⇔ できなくて恥ずかしい
身につく力:意志(自分で決めてやってみる力)
分かれ道:やりたいことに踏み出せる ⇔ 踏み出すと悪い気がする
身につく力:目的(やりたい方へ向かっていく力)
分かれ道:やればできる ⇔ 自分はダメだ
身につく力:有能感(自分はできる、という感覚)
分かれ道:自分が何者かわかる ⇔ わからない
身につく力:アイデンティティ(自分らしさ)
赤ちゃんって、お腹すいたら泣く、オムツ気持ち悪いから泣く、を延々と繰り返しますよね。
そのたびに誰かが来てくれて、ミルクをくれて、オムツを替えてくれる。この「訴えたら応えてもらえた」の積み重ねで、「この世界は信頼していい場所だ」っていう感覚が育つ。それが基本的信頼。
そしてこれが、その後の「自分を信じる力」「他人を信じる力」の土台になる、と。
なるほど、だから家の基礎工事なんだ🤔
内装や外装(=勉強とか習い事とか)は後から何とでもなるけど、基礎だけは先に作らないといけない。この例えは、めちゃくちゃ腑に落ちました。
「ちゃんとできてる?」を確認する方法、実はあります
ここが今回いちばん知りたかったところ。
調べたら、乳幼児の愛着(アタッチメント)を測定する方法、ちゃんと存在してました。
その名も「ストレンジ・シチュエーション法(SSP)」。心理学者のメアリー・エインズワースが考案したものです。
しかも対象年齢が…
生後12〜24ヶ月。
今じゃん。まさに今じゃん。
何を測ってるの?
この実験、「子どもが親を”安全基地”として使えているか」を見ています。
どういうことかというと。
子どもって、不安になったり怖くなったりすると、心がぐちゃぐちゃになりますよね。そのぐちゃぐちゃを、親を使って自分で立て直せるかどうか。 そこを見てるんです。
だから実験でも、わざと不安な状況を作ります。
ポイントは「ママがいなくなったとき」ではなく、「ママが戻ってきたときに、どうやって落ち着きを取り戻すか」。
泣いてもいいんです。むしろ泣いていい。見られているのは、そのあと立て直せるかのほうです。
4つのタイプは「立て直し方」のパターン
① 安定型
ママが出ていくと不安がる。戻ってくると自分から近づいて、抱っこされるとわりとすぐ落ち着く。そしてまた遊びに戻る。
→ 「困ったらこの人に頼れば大丈夫」が身についている状態。
② 回避型
出ていっても平気そう。戻ってきても目をそらす、避ける。
→ 平気に見えるけど、心拍数を測ると実はストレスがかかっているという研究もあります。「求めても仕方ない」を学習してしまっている状態と考えられています。
③ 抵抗(アンビバレント)型
出ていくと激しく泣く。戻ってくると抱っこを求めるのに、同時に怒ったり叩いたりして、なかなか落ち着かない。
→ 「来てくれるときとくれないときがある」という不安定さから、しがみつきと怒りが混ざる状態。
④ 無秩序型
ママに近づきかけて途中で固まる、抱っこされながら顔を背ける、その場でぐるぐる回るなど、行動がちぐはぐになる。
→ 「頼りたい相手」と「怖い相手」が同じ人になってしまい、どうしたらいいか分からなくなっている状態。虐待や、親自身が強い不安を抱えているケースで見られやすいとされています。
大事なのは、これは「いい子・悪い子」のラベルじゃないということ。子ども個人の性格判定でもありません。
測っているのは「その親子の関係のパターン」。だから、関わり方が変われば変わりうるものとされています。
ちなみに一般的な家庭を対象にした調査だと、安定型がだいたい6割前後という結果が多いです。
ただし、家では受けられません
これは訓練を受けた専門家が実験室でやるもの。 病院で受けられる検査ではありませんでした。
ただ、調べていて気づいたことがあって。
この実験がやってる「離れて、戻ってくる」って、日常で毎日起きてるんですよね。
保育園のお迎え。トイレに行って戻ったとき。別の部屋から戻ったとき。
そこでの反応を見れば、実験室に行かなくてもだいたい分かる。 というわけで、日常のサインの話に進みます。
じゃあ日常で見分けるサインは?
専門家じゃなくても、家で見られるサインはあります。キーワードは「安全基地」。
ボウルビィという研究者が言うには、安定した愛着ができている子は、
親から離れて探索 → 不安になったら戻ってくる → また離れていく
この「行ったり来たり」をするんだそうです。
日常で見られるサイン、こんな感じ。
後追いも人見知りも、実は「順調に育ってる証拠」なんですよね。しんどいけど。
ただし、これはあくまで目安。チェックリストにして「うちの子当てはまらない…」と落ち込むのは違います。 子どもには生まれつきの気質もあるし、月齢や体調でも変わります。
「怒っちゃった…」の日があっても、リカバリーできる
ここ、いちばん救われた情報です。
私、図解を見たあと「頑張って怒らないようにしよう」って決意したんですが、やっぱりできない時もありますよね😭
で、調べていて出会ったのが、発達心理学者エドワード・トロニックの研究。
スティルフェイス実験
有名な実験があります。
ママと赤ちゃんが楽しくやりとりしている状態から、ママが突然、無表情になる。
赤ちゃんは必死に笑いかけたり、指をさしたり、声を出したりして反応を引き出そうとします。それでも無反応が続くと、数十秒で泣き出して、最終的には情緒的に引きこもってしまう。
…これだけ聞くと「やっぱりちゃんと反応しなきゃダメじゃん!」ってなりますよね。
でも、トロニックが本当に伝えたかったのは、その先でした。
「ピッタリ合ってる」のは3割だけ
トロニックは、母子のやりとりを秒単位で分析しました。表情、声、視線。
その結果わかったのが、親子のやりとりがピッタリ噛み合っているのは、平均でたった30%程度だということ。
ここでいう「ズレ」って、こういうことです。
要するに、日常でめちゃくちゃ起きてるやつ。
これが7割。プロの研究対象になるような、ごく普通の親子で7割です。
大事なのはズレないことじゃなくて、ズレたあとに「また合わせ直す」プロセス。これを「修復(リペア)」と呼びます。
実験でも、ママが再び笑顔を向けると、赤ちゃんはすぐ安心を取り戻したそうです。
今日からできる声かけ「サーブ&リターン」
じゃあ具体的に何をすればいいのか。
ここで出てくるのが、ハーバード大学「子どもの発達センター」が提唱している「サーブ&リターン(Serve and Return)」という考え方。
テニスの打ち合いみたいに、子どもが出したサインに、大人が打ち返す。 この往復が、脳の土台を作るという話です。
5つのステップが公開されているので、1歳児バージョンにして紹介します。
① サーブに気づいて、同じものを見る
子どもが指さしたら、同じ方向を見る。おもちゃを見てたら、一緒にそれを見る。
→ まだ言葉がなくても、指さしは立派な「サーブ」。
② 打ち返す(受け止めて、励ます)
「そうだねー」「あ、見つけたね!」と反応する。うなずくだけでもOK。
③ 子どもが今見てるものに、名前をつける
名前をつける対象は、子どもが今、見てるもの・やってること・感じてること。
→ 話せなくても、意味がわかってなくても、脳の中で「これ」と「ことば」がつながっていくそうです。
④ 交代する(=次は子どもの番。だから待つ)
テニスと同じで、こっちが打ち返したら、次は子どもが打つ番。この交代を続けるのが目的です。
ただ1歳児って、打ち返してくるまでにめちゃくちゃ時間がかかる。その間が持たなくて、大人はつい先回りして喋っちゃうんですよね。でもそこで喋ると、子どもの番を奪ってることになる。
黙って待つ。これが個人的にいちばん難しいです。
⑤ 終わりと始まりに気づく
子どもが別のものに興味を移したら、無理に引き戻さない。それも大事なサイン。
なお、この動画は日本産婦人科医会が日本語版を作って公開しています。無料で見られるので、興味あればぜひ。
ちなみに「3歳児神話」は、公的に否定されています
最後に、これも書いておきたい。
「3歳までは母親が家で育てるべき」っていう、いわゆる「3歳児神話」。
これ、厚生省(当時)が1998年の厚生白書で、はっきり否定しています。
三歳児神話には、少なくとも合理的な根拠は認められない。
理由として挙げられていたのが、
さらに、2004年の厚生労働省研究班の調査(認可保育園約80ヶ所、園児3000人前後を5年追跡)では、保育園にいる時間の長さは子どもの発達にほとんど影響しなかったという結果も出ています。
土台を作るのは「母親が24時間そばにいること」じゃなくて、「応答してくれる大人がいること」。
しかも愛着って、複数の大人と結べるんです。パパ、じいじばあば、保育園の先生。むしろ安全基地は多いほうがいい。
時短で働こうが、フルタイムで働こうが、保育園に預けようが、土台は作れます。
