- 不妊治療の基礎用語一覧|意味と解説
- 基礎体温
- 婦人体温計
- 不妊症
- 不育症
- 無精子症
- 男性不妊
- BMI
- 子宮内フローラ検査
- AMH(抗ミュラー管ホルモン)
- 卵管造影検査
- 高額療養費制度
- 医療費控除
- タイミング法
- 人工授精(AIH)
- 体外受精(IVF)
- 排卵・排卵日
- DHEA
- 経膣
- 自己注射
- 採卵
- 全身麻酔(静脈麻酔・吸入麻酔)
- 局所麻酔
- ショート法
- ロング法
- アンタゴニスト法
- PPOS法
- 顕微授精
- タイムラプス
- 子宮内膜刺激胚移植法(SEET法)
- 子宮鏡検査
- 胚(はい)
- 胚盤胞
- 胚移植法
- 凍結胚
- 胚の評価(グレード)
- 黄体ホルモン(プロゲステロン)
- HCG注射(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
- BT
- ○w○d
- 着床
- 卵管
- 卵胞
- 胎嚢(たいのう)
- 稽留流産(けいりゅうりゅうざん)
- 多胎妊娠
- 切迫流産
- 子宮外妊娠
- 抗リン脂質抗体症候群
- 抗精子抗体(こうせいしこうたい)
- 妊婦検診
- 妊娠悪阻(にんしんおそ)
- 出生前診断(しゅっせいぜんしんだん)
- 妊娠糖尿病
- 切迫早産
- 臨月
- 分娩(ぶんべん)
- 経産婦
- 【一覧表】不妊治療の専門用語
- 注意事項
不妊治療の基礎用語一覧|意味と解説
本記事は医療専門家によるものではなく、一般的な情報提供を目的としています。治療内容については、必ず医師や専門家にご相談ください。
基礎体温
毎朝起床前に測る体温で、排卵の有無や妊娠の可能性を確認するために使用されます。低温期と高温期があり、排卵後は高温期が続きます。
婦人体温計
基礎体温を測る専用の体温計で、微細な変化を測定できるよう設計されています。
不妊症
1年間以上妊娠を試みても成功しない状態を指します。原因は男女双方にある場合があります。
不育症
妊娠はするものの、流産や死産を繰り返してしまう状態を指します。原因は様々で、適切な検査と治療が必要です。
無精子症
精液中に精子がまったく存在しない、または極めて少ない状態を指します。原因によっては治療可能な場合もあります。
男性不妊
男性側の要因による不妊のことです。精子の数や質に問題がある場合などが該当します。
BMI
体重と身長から算出される体格指数で、肥満や痩せすぎの指標として広く使われています。不妊治療においても、適切なBMIが妊娠の可能性に影響を与えることが知られています。肥満や痩せすぎはホルモンバランスを崩し、不妊の原因となる場合があります。
【計算方法】
BMI = 体重(kg) ÷ (身長(m) × 身長(m))
例:体重60kg、身長160cmの場合
BMI = 60 ÷ (1.6 × 1.6) = 23.4
【判定基準(日本基準)】
・18.5未満: 痩せすぎ
・18.5~24.9: 普通体重
・25.0~29.9: 肥満(1度)
・30.0以上: 肥満(2度以上)
【不妊との関係】
・痩せすぎ(低BMI): ホルモンバランスが乱れ、排卵障害を引き起こす可能性があります。
・肥満(高BMI): 月経不順や排卵障害、着床率の低下、流産リスクの増加につながることがあります。
適切なBMIを維持することは、妊娠の可能性を高めるためにも重要です。
子宮内フローラ検査
子宮内の細菌バランスを調べる検査です。子宮内に「良い細菌(主にラクトバチルス属)」が多いと、妊娠しやすい環境だと考えられています。一方で、悪い細菌が多い場合は着床障害や流産のリスクが高まる可能性があります。
【検査方法】
1.婦人科の診察台に横になります。
2.医師が膣鏡を挿入し、子宮口を確認します。
3.細い綿棒や専用の器具を使って、子宮頸管や子宮内から少量の分泌物を採取します。
【痛みについて】
・通常、軽い不快感はありますが、強い痛みはありません。
・経験者の多くは、痛みはほとんどないか、軽微だと報告しています。
・痛みの感じ方には個人差があります。
【注意点】
・検査は数分で終わります。
・月経中や性交後24時間以内は避けます。
・検査後に少量の出血や下腹部の軽い痛みがあることがありますが、通常すぐに治まります。
不安がある場合は、事前に医師に相談することをおすすめします。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)
卵巣にどのくらい卵子が残っているかを示す指標です。数値が高いほど、卵子の数が多いとされます。
- 意味: 卵巣内の原始卵胞から分泌されるホルモンで、卵子の数を反映します。
- 検査方法:採血
- 役割: 卵巣の卵子残量を示し、将来の妊娠可能性を予測します。
- 特徴: 月経周期に関係なく測定でき、年齢とともに低下します。
- 数値の解釈:
- 高い数値: 卵子が多い
- 低い数値: 卵子が少ない
- 活用: 不妊治療の計画や卵巣刺激の反応性予測に役立ちます。
- 一般的な基準値:
1.0 ng/mL以上: 良好
0.7-1.0 ng/mL: やや低め
0.7 ng/mL未満: 低い(要注意)
AMHは卵巣の状態を知るための重要な指標ですが、妊娠の可能性を判断するには他の要素も考慮する必要があります。
卵管造影検査
卵管造影検査は、卵管が正常に通っているか(通過性)や形状に異常がないかを確認するための重要な不妊検査です。卵管は、卵巣から排卵された卵子が子宮へと移動する通り道であり、精子と卵子が出会う受精の場でもあります。そのため卵管が詰まっていたり狭くなっていたりすると、受精や妊娠が難しくなる可能性があります。
この検査では、X線を使用して造影剤の流れを観察し、卵管の状態や子宮の形状も同時に評価します。不妊の原因を特定し、治療方針を決める上で非常に重要な役割を果たします。
検査の流れ:
- 婦人科診察台に横になります。
- 膣鏡を挿入し、子宮頸部を消毒します。
- 子宮口にカテーテルを挿入します。
- X線透視下で、カテーテルから造影剤を注入します。
- 造影剤の流れをX線で観察し、卵管の形や通過性を確認します。
注意点:
- 検査時間は約15~30分程度です。
- 月経終了後1週間頃に行います。
- 軽い痛みや不快感(生理痛のような痛み)を感じることがあります。また、卵管が詰まっている場合や子宮の形状に異常がある場合には、痛みがより強く感じられることがあります。
- 検査後、少量の出血や腹痛が起こることがあります。
高額療養費制度
医療費が一定額を超えた場合に払い戻しが受けられる制度です。不妊治療にも適用される場合があります。
医療費控除
年間医療費が一定額を超えると税金の控除が受けられる制度です。不妊治療費も対象となります。
タイミング法
タイミング法は、多くのカップルが最初に試みる方法です。
通常、3〜6ヶ月間試みても妊娠しない場合、次のステップに進むことが推奨されます。
- 排卵日の予測
- 基礎体温の測定
- 超音波検査
- 血液検査
- 適切な時期の性交渉
- 排卵予定日の2〜3日前から排卵日まで
- 妊娠の確認
- 妊娠4週:尿検査または血液検査
- 妊娠5週:超音波で胎嚢確認
- 妊娠6〜7週:心拍確認
人工授精(AIH)
精子を直接子宮内に注入する方法で、軽度の不妊症に適しています。
※タイミング療法で妊娠に至らない場合、人工授精が次の選択肢となります。
※人工授精は通常3〜6回程度試みられます。
- 排卵誘発剤の使用
- 排卵日の決定
- 精子の調整
- 子宮内への精子注入
- 妊娠の確認
体外受精(IVF)
卵子と精子を体外で受精させた後、受精卵を子宮に戻す治療法です。成功率が比較的高い特徴があります。
※人工授精でも妊娠に至らない場合、体外受精が検討されます。
- 卵巣刺激
- 卵子採取
- 精子の調整
- 体外受精
- 胚培養
- 胚移植
- 黄体補充
- 妊娠判定と経過観察
排卵・排卵日
卵巣から成熟した卵子が放出されること。排卵日は妊娠可能性が最も高い日です。
DHEA
ホルモン補充療法で使用される成分です。デヒドロエピアンドロステロンの略。
不妊治療では、卵巣機能の低下した女性に対して使用されることがあるサプリメントです。卵子の質や数の改善、妊娠率の向上が期待されますが、効果には個人差があります。医師の指示のもとで慎重に使用する必要があります。
経膣
膣を通して行う診察や処置の方法です。採卵や超音波検査などで実施されます。体外からの方法と比べて、より詳細な観察や正確な処置が可能で、不妊治療では頻繁に行われる重要な手法です。
自己注射
病院に行かずに自分で注射する方法です。排卵誘発剤などを使用する際に行うことがあります。通院回数を減らせる利点があります。
採卵
体外受精などで使用する卵子を、卵巣から取り出す処置です。通常、麻酔をかけて行われます。超音波で卵巣の位置や卵胞を確認しながら、細い針を膣から挿入して卵子を吸引します。
全身麻酔(静脈麻酔・吸入麻酔)
意識がなくなる麻酔方法です。採卵などの処置で使用されることがあります。
局所麻酔
体の一部のみを麻酔する方法です。軽度の処置に使用されます。
ショート法
体外受精の際の卵巣刺激法の一つです。排卵抑制剤の使用期間が短く、比較的負担が少ないのが特徴です。
ロング法
ショート法と比べて排卵抑制剤の使用期間が長い卵巣刺激法です。卵胞の成長をより細かくコントロールできます。
アンタゴニスト法
体外受精の際の卵巣刺激法の一つです。副作用が比較的少ないのが特徴です。
PPOS法
プロゲステロンを使用して排卵を抑制しながら卵巣刺激を行う方法です。
顕微授精
精子を直接卵子に注入する方法です。主に精子の数が少ない、運動能力が低い、正常な形の精子が少ないなど、精子の状態が良くない場合に行われます。
顕微鏡を使って1つの精子を選び、極細の針で卵子に注入するため、高度な技術が必要。受精後は胚(はい)として培養し、着床を目指して子宮に移植します。
タイムラプス
受精卵(胚)の発育過程を連続的に撮影・観察する技術です。不妊治療で使用される特殊な培養装置を用いて、胚の分裂や成長状態をリアルタイムで記録します。これにより、胚の発育スピードや形態の変化を詳細に把握できるため、着床しやすい良好な胚を選ぶ際に役立ちます。
従来の方法と比べて、胚を取り出さずに観察できるため、胚へのストレスが少ないのが特徴。体外受精や顕微授精の成功率向上が期待される技術です。
子宮内膜刺激胚移植法(SEET法)
胚(受精卵)を子宮に戻す前に、胚培養液を子宮に注入する方法です。着床率の向上を目的としています。SEET は Stimulation of Endometrium Embryo Transfer の略。
【手順】
1) まず、胚を育てていた培養液を子宮に注入する。
2) その後、実際の胚を移植する。
目的は子宮内膜を刺激し、胚が着床しやすい環境を整えること。培養液には胚が出す化学物質が含まれており、これが子宮内膜に働きかけると考えられている。
従来の方法より着床率が向上する可能性があるが、効果については研究段階。全ての人に効果があるわけではなく、医師と相談して実施を決める必要がある。自費診療。
子宮鏡検査
子宮内部を直接観察する検査方法です。 細い管状のカメラ(子宮鏡)を膣から子宮に挿入し、子宮内の異常(ポリープ、筋腫、癒着など)や着床障害の原因を調べます。
通常は生理終了後に行われますが、子宮内膜の状態を確認して着床環境を整える目的で、体外受精の胚移植前に実施されることもあります。
目的:
1) 子宮内の形や状態を詳しく観察する。
2) 不妊の原因となる子宮の異常(ポリープ、筋腫、癒着など)を見つける。
3) 着床障害の原因を調べる。
特徴:
1) 外来で10〜15分程度で終わる。
2) 痛みは少ないが、人によっては軽い痛みや不快感を感じることも。
3) 生理が終わってから1週間以内くらいに行うのが一般的。
4) 必要に応じて、同時に小さな治療(ポリープ切除など)も可能。
利点:
超音波検査では分かりにくい子宮内の細かい状態まで確認できる。不妊治療の方針を決める上で重要な情報が得られる検査。
胚(はい)
受精卵が分裂を始めた状態を指します。
胚盤胞
受精後5〜6日目の発育段階の胚を指します。内部に空洞(胞胚腔)を持つ構造で、内部には内細胞塊(将来の胎児になる部分)と栄養外胚葉(将来の胎盤になる部分)があります。
胚盤胞は着床しやすいとされており、体外受精での成功率向上に貢献しています。特に、着床のタイミングが自然に近いため、複数胚移植時の多胎妊娠リスクを減らすこともできます。
胚移植法
胚を子宮に戻す処置です。分割胚移植、胚盤胞移植、凍結融解胚移植、二段階胚移植などの方法があります。
体外受精で作られた胚を子宮に戻す処置。
【主な方法】
1. 分割胚移植:受精後2〜3日目の4〜8細胞期の胚を移植。
2. 胚盤胞移植:5〜6日目のより発達した胚を移植。着床率が高い。
3. 新鮮胚移植:採卵後すぐに培養し移植する方法。
4. 凍結融解胚移植:一度凍結保存した胚を解凍して移植。体調や子宮内膜の状態に合わせやすい。
5. 単一胚移植:1個の胚のみを移植。多胎妊娠のリスクを減らす。
6. 複数胚移植:2個以上の胚を同時に移植。妊娠率は上がるが多胎のリスクも増加。
移植方法は個々の状況に応じて医師と相談の上、決定します。
凍結胚
体外受精で作られた胚(受精卵)を、将来の使用のために冷凍保存したものです。状態の良い胚を複数個保存できるメリットがあります。
【特徴と利点】
1. 液体窒素を使用し、-196℃で保存。長期間の保存が可能。
2. 状態の良い胚を複数個保存できる。
3. 体調や子宮内膜の状態が最適なタイミングで移植できる。
4. 採卵の回数を減らせる可能性がある。
5. 過剰排卵刺激症候群(OHSS)のリスクを軽減できる。
6. がん治療前の妊孕性温存に活用できる。
7. 自然周期での移植が可能になり、ホルモン剤の使用を減らせる。
デメリットとしては、解凍時に一部の胚が損傷する可能性があること。ただし、最新の技術では高い生存率が期待できる。
胚の評価(グレード)
胚の質を評価する基準です。グレードが高いほど妊娠率が高いとされています。
黄体ホルモン(プロゲステロン)
妊娠維持に必要なホルモンです。子宮内膜を整え、着床を助けます。胚移植後に補充することも。
【定義】
卵巣の黄体から分泌されるホルモン
【役割】
・子宮内膜を厚くし受精卵の着床を助ける
・妊娠初期の子宮収縮を抑え流産を防ぐ
・母体の免疫機能を調整し胎児を守る
・乳腺の発達を促進する
【不妊治療での使用】
胚移植後の子宮内膜サポートに使用
HCG注射(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
不妊治療で広く使用されるホルモン注射です。主な役割は卵胞の最終成熟と排卵の誘発です。体外受精では採卵のタイミングを決める重要な役割を果たし、注射後約34〜36時間で採卵を行います。また、人工授精や一般不妊治療でも排卵のタイミングを調整するために使用されます。
HCGは黄体機能も高める効果があり、妊娠初期に胎盤から自然に分泌されるホルモンと同じ成分です。ただし、過剰排卵刺激症候群(OHSS)のリスクがあるため、医師の指示に従って慎重に使用する必要があります。
BT
「胚盤胞移植(Blastocyst Transfer)」の略で、受精卵を5~6日間培養して胚盤胞に成長させてから子宮に移植する方法です。
・「BT1」は移植翌日
・「BT5」は移植から5日目を指します。
この表記は治療経過の確認や妊娠判定に使用されます。
なお、凍結胚盤胞移植の場合も慣習的に「BT」を使うことがあり、移植日をBT0として同様に日数をカウントします。
○w○d
妊娠週数を表す表記方法です。
例えば「6w2d」は妊娠6週2日目を意味します。
- 「w」は「week(s)」(週)の略
- 「d」は「day(s)」(日)の略
着床
受精卵が子宮内膜に定着することを指します。これにより妊娠が成立します。
卵管
卵巣と子宮をつなぐ管です。通常、ここで受精が起こります。卵管の異常は不妊の原因になることがあります。
卵胞
卵巣内にある袋状の構造で、中に卵子が含まれています。成熟すると排卵が起こります。
胎嚢(たいのう)
妊娠初期に形成される袋状の構造で、胎児が発育する場所です。胎嚢の中には、胎児が成長するための環境が整っています。
稽留流産(けいりゅうりゅうざん)
妊娠初期に起こる流産の一種です。胎児の発育が止まっているにもかかわらず、子宮から自然に排出されない状態を指します。多くの場合、出血や腹痛などの症状がないため、妊婦自身が気づくことは難しく、通常は定期的な超音波検査で発見されます。
診断後は、自然排出を待つか、医師と相談の上で薬物療法や手術による処置を行うことがあります。早期発見と適切な対応が重要なため、定期的な妊婦健診が大切です。
多胎妊娠
複数の赤ちゃんを妊娠している状態です。体外受精では起こりやすくなる可能性があります。
切迫流産
切迫流産とは、妊娠22週未満で流産の危険性が高い状態を指します。ただし、実際に流産が起こったわけではなく、適切な治療や安静によって妊娠が継続できる可能性があります。
【主な症状】
・出血: 少量から多量までさまざま。鮮血や茶色いおりものとして現れることもあります。
・腹痛: 下腹部の痛みや張りを感じることがあります。
・その他: 腰痛や違和感を訴える場合も。
【原因】
・胎児側の要因(染色体異常など)
・母体側の要因(子宮の異常、感染症、ホルモンバランスの乱れ、過労やストレスなど)
【対処法】
・安静: 自宅や病院での安静が基本です。
・薬物療法: 子宮収縮を抑える薬やホルモン補充療法が行われる場合もあります。
・医師の指示に従う: 出血や痛みが続く場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
【注意点】
切迫流産は早期発見と適切な対応が重要です。症状があれば無理をせず、医師に相談することが大切です。
子宮外妊娠
受精卵が子宮以外の場所(多くは卵管)に着床してしまう状態です。母体に危険を及ぼす可能性があるため、早期発見・治療が重要です。
抗リン脂質抗体症候群
体内で特殊な自己抗体(抗リン脂質抗体)が作られることで起こる自己免疫疾患です。この病気の特徴は、血液が固まりやすくなり、体のさまざまな場所で血栓ができやすくなることです。
この症候群は不育症(繰り返し流産すること)の原因になることがあり、妊娠に大きな影響を与えます。主な症状としては、習慣流産(何度も流産を繰り返すこと)、血栓症(静脈や動脈に血の塊ができること)、血小板減少症などがあります。
妊娠中の方にとっては、流産リスクが高まり、妊娠後期には子宮内胎児発育不全や妊娠高血圧症候群などの合併症リスクも増します。早期発見と適切な治療が重要で、血液をサラサラにする薬やアスピリンが用いられることがあります。
抗精子抗体(こうせいしこうたい)
体内で精子に対する抗体が作られてしまう状態です。これにより精子の動きが阻害され、受精が困難になることがあります。
妊婦検診
妊娠中の母体と胎児の健康状態を定期的に確認する重要な健康診断です。妊娠週数に応じて頻度が変わり、体重・血圧測定、尿検査、超音波検査などが行われます。
【主な内容】
・体重・血圧測定
・尿検査
・超音波検査(胎児の成長確認)
・血液検査
・子宮底長・腹囲測定
【通う時期(目安)】
初期~妊娠23週まで、4週間に1回
24週~35週まで、2週間に1回
36週~出産まで、1週間に1回
これにより、妊娠経過の異常を早期に発見し、適切な対応をとることができます。また、出産に向けての相談や指導も行われ、安全な妊娠・出産をサポートします。
妊娠悪阻(にんしんおそ)
妊娠初期に起こる強い吐き気や嘔吐のことです。通常は一時的ですが、重症の場合は入院治療が必要になることもあります。
出生前診断(しゅっせいぜんしんだん)
胎児の異常や疾患を妊娠中に診断する検査のことです。
非侵襲的(体を傷つけたり、体内に器具を入れたりしない)検査から、羊水検査まで、様々な方法があります。
🌿出生前診断の主な方法🌿
【 NIPT 】
・方法:母体の血液検査
・時期:妊娠10週~
・費用:約15万円~20万円
・特徴:非侵襲的、非確定的検査。陽性の場合は確定検査が必要
【 羊水検査 】
・方法:お腹に細い針を刺して羊水を少量採取します。赤ちゃんの染色体などを詳しく調べられますが、流産のリスクが少しあります。
・時期:妊娠15週~18週
・費用:約15万円~20万円
・特徴:侵襲的、確定検査。流産リスク約0.5%
【 絨毛検査 】
・方法:細い管や針を使って、腹壁または膣を通して胎盤の一部(絨毛)を採取します。羊水検査と同様に、流産のリスクがあります
・時期:妊娠10週~13週
・費用:約20万円~
・特徴:侵襲的、確定検査。流産リスク約1%
【 胎児ドッグ 】
・方法:超音波検査を中心とした総合的な検査
・時期:妊娠中期~後期
・費用:約5万円~15万円
・特徴:非侵襲的、形態異常の発見に有効
📌注意: 費用や実施時期は医療機関によって異なる場合があります。詳細は担当医に確認してください。
妊娠糖尿病
妊娠中に初めて発見または発症する糖尿病のことです。母体と胎児の両方に影響を与える可能性があるため、適切な管理が重要です。
【① 発症のメカニズム】
・妊娠中はホルモンの影響で、インスリンの効きが悪くなります。
・通常、体はより多くのインスリンを分泌して対応しますが、それが追いつかない場合に発症します。
【② 妊娠糖尿病になりやすい人】
・35歳以上の高齢出産
・肥満(BMI 25以上)
・過去の妊娠糖尿病の既往
・家族歴(糖尿病の家族がいる)
【③ 診断方法】
・主に妊娠中期(24〜28週)に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行います。
・この検査で血糖値が基準値を超えた場合、妊娠糖尿病と診断されます。
※ 妊娠初期(13週まで):空腹時血糖値やHbA1cを測定
※ 妊娠後期(29週以降):必要に応じて再検査
【④ 影響と合併症】
<母体への影響>
・妊娠高血圧症候群のリスク上昇
・将来の2型糖尿病発症リスクの増加
<胎児・新生児への影響>
・巨大児(4000g以上)
・低血糖
・黄疸
・呼吸障害
【⑤ 管理と治療】
・食事療法:炭水化物の摂取量や食事のタイミングを調整
・運動療法:適度な運動を行う
・血糖自己測定:定期的に血糖値をチェック
・必要に応じてインスリン療法
【⑥ 出産後の経過】
・多くの場合、出産後に血糖値は正常化します。
・しかし、将来の2型糖尿病発症リスクが高いため、定期的な検査が推奨されます。
妊娠糖尿病は適切に管理すれば、母子ともに健康な出産が可能です。早期発見と適切な対応が重要なので、定期的な妊婦健診を受けることが大切です。
切迫早産
妊娠22週から36週6日までの間に、早産になる危険性が高い状態を指します。この状態では、お腹の張り(子宮収縮)が頻繁に起こり、子宮口が開き始めるなどの症状が見られます。性器出血や破水が伴う場合もあり、早産に至る可能性があるため注意が必要です。
治療としては、安静を保つことや子宮収縮を抑える薬の投与が行われます。重症の場合は入院して管理することもあります。切迫早産を防ぐためには、無理を避け、定期的な妊婦健診で早期発見・対応を心がけることが重要です。
【主な原因】
過労、ストレス、感染症、多胎妊娠、子宮頸管無力症など
【治療方法】
安静を保つ、子宮収縮を抑える薬の投与、必要に応じて入院管理
臨月
妊娠36週以降の出産予定日までの最後の1か月を指します。この時期は「いつ産まれてもおかしくない」とされ、赤ちゃんが外の環境に適応しやすいとされています。
※ただし「臨月」は医学用語ではなく、病院では「正期産」(妊娠37週0日から41週6日)という用語が使われます。
この時期、妊婦は体調管理に注意が必要です。妊婦健診は1週間に1回となり、出産準備が進みます。腰痛や尿漏れ、前駆陣痛などが起こることもあります。出産が近づくにつれ、体調に気をつけながら、出産準備を整えることが重要です
分娩(ぶんべん)
お産のことを指します。陣痛が始まってから胎盤が排出されるまでの一連の過程を含みます。
経産婦
すでに出産経験のある女性のことを指します。初めて出産する初産婦と区別されます。

ここから下は、簡単な表にしました。
【一覧表】不妊治療の専門用語
用語 | 説明 |
---|---|
基礎体温 | 毎朝起床前に測る体温。排卵や妊娠の可能性を確認するのに使用。 |
婦人体温計 | 基礎体温を測る専用の体温計。微細な温度変化を測定可能。 |
不妊症 | 1年以上妊娠できない状態。原因は男女両方にある可能性あり。 |
不育症 | 妊娠はするが、流産や死産を繰り返す状態。適切な検査と治療が必要。 |
無精子症 | 精液中に精子がない、または極めて少ない状態。 |
男性不妊 | 男性側の要因による不妊。精子の数や質に問題がある場合など。 |
BMI | 体重と身長から算出される体格指数。肥満や痩せすぎが不妊の原因になることも。 |
子宮内フローラ検査 | 子宮内の細菌バランスを調べる検査。良い細菌が多いと妊娠しやすい。 |
AMH | 卵巣の卵子の残り具合を示す指標。数値が高いほど卵子が多い。 |
卵管造影検査 | 卵管の通り具合を調べる検査。不妊の原因特定に役立つ。 |
高額療養費制度 | 医療費が一定額を超えた場合に払い戻しが受けられる制度。 |
医療費控除 | 年間医療費が一定額を超えると税金の控除が受けられる制度。 |
タイミング法 | 基礎体温や排卵日を基に性交のタイミングを調整する方法。 |
人工授精(AIH) | 精子を直接子宮内に注入する方法。軽度の不妊症に適している。 |
体外受精(IVF) | 卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮に戻す治療法。 |
排卵・排卵日 | 卵巣から成熟卵子が放出されること。妊娠可能性が最も高い日。 |
DHEA | ホルモン補充療法で使用される成分。不妊治療では、卵巣機能の低下した女性に対して使用されることがある。卵子の質や数の改善、妊娠率の向上が期待されるが、効果には個人差がある。 |
経膣 | 膣から行う診察や処置。採卵や超音波検査などで実施される。 |
自己注射 | 自分で注射する方法。排卵誘発剤などで使用。通院回数減少のメリット。 |
採卵 | 卵巣から成熟した卵子を取り出す医療処置。通常、麻酔をかけて行われる。細い針を膣から挿入し、超音波ガイド下で卵巣にある卵子を吸引して取り出す。 |
全身麻酔 | 意識がなくなる麻酔方法。採卵などの処置で使用。 |
局所麻酔 | 体の一部のみを麻酔する方法。軽度の処置に使用。 |
ショート法 | 体外受精の卵巣刺激法。排卵抑制剤の使用期間が短い。 |
ロング法 | ショート法より排卵抑制剤の使用期間が長い卵巣刺激法。 |
アンタゴニスト法 | 体外受精の卵巣刺激法。副作用が比較的少ない。 |
PPOS法 | プロゲステロンで排卵抑制しながら卵巣刺激を行う方法。 |
顕微授精 | 精子を直接卵子に注入する方法。精子の状態が良くない場合に使用。 |
タイムラプス | 受精卵(胚)の発育過程を連続的に撮影・観察する技術。不妊治療で使用される特殊な培養装置を用いて、胚の分裂や成長状態をリアルタイムで記録する。良好な胚の選別に役立つ。 |
子宮内膜刺激胚移植法(SEET法) | 胚移植前に胚培養液を子宮に注入する方法。着床率向上が目的。 |
子宮鏡検査 | 子宮内部を直接観察する検査。子宮内の異常や着床障害の原因を調査。 |
胚 | 受精卵が分裂を始めた状態。 |
胚盤胞 | 受精後5〜6日目の胚。着床しやすいとされる。 |
胚移植法 | 胚を子宮に戻す処置。分割胚移植、胚盤胞移植、凍結融解胚移植、二段階胚移植などの方法がある。 |
凍結胚 | 体外受精で作られた胚(受精卵)を、将来の使用のために冷凍保存したもの。 |
胚の評価(グレード) | 胚の質を評価する基準。グレードが高いほど妊娠率が高い。 |
黄体ホルモン | 妊娠維持に必要なホルモン。子宮内膜を整え、着床を助ける。 |
HCG注射 | 排卵を促す注射。採卵や人工授精のタイミング決定に使用。 |
BT | 「胚盤胞移植(Blastocyst Transfer)」の略で、受精卵を5~6日間培養して胚盤胞に成長させてから子宮に移植する方法です。 (例:BT1は移植翌日、BT5は移植から5日目) |
○w○d | 妊娠週数の表記。 例:6w2dは妊娠6週2日目を意味する。 |
着床 | 受精卵が子宮内膜に定着すること。これにより妊娠が成立。 |
卵管 | 卵巣と子宮をつなぐ管。通常ここで受精が起こる。 |
卵胞 | 卵巣内の卵子を含む袋状構造。成熟すると排卵が起こる。 |
胎嚢 | 妊娠初期に形成される袋状の構造で、胎児が発育する場所。胎嚢の中には、胎児が成長するための環境が整っている。 |
稽留流産 | 胎児の発育停止後、自然排出されない状態。超音波検査で発見。 |
多胎妊娠 | 複数の胎児を妊娠している状態。体外受精で起こりやすい。 |
切迫流産 | 流産の危険性が高い状態。主な症状は出血や腹痛で、安静や投薬による治療が行われる。 |
子宮外妊娠 | 子宮以外(多くは卵管)に着床した状態。早期発見・治療が重要。 |
抗リン脂質抗体症候群 | 血栓ができやすい自己免疫疾患。不育症の原因になることがある。 |
抗精子抗体 | 体内で精子に対する抗体ができる状態。受精が困難になる。 |
妊婦検診 | 妊娠中の母体と胎児の健康状態を定期的に確認する重要な健康診断。 |
妊娠悪阻 | 妊娠初期の強い吐き気や嘔吐。重症の場合は入院治療が必要。 |
出生前診断 | 妊娠中に胎児の異常や疾患を診断する検査。様々な方法がある。 |
妊娠糖尿病 | 妊娠中に発症する糖尿病。母体と胎児両方への影響に注意が必要。 |
切迫早産 | 妊娠22週から36週6日までの間に、早産のリスクが高まった状態。お腹の張り(子宮収縮)や子宮口の開き、性器出血、破水などが見られることがある。 |
臨月 | 妊娠36週0日から39週6日までの期間。出産予定日が近づく最後の1か月を指す。赤ちゃんがいつ生まれてもおかしくない時期。 |
分娩 | お産のこと。陣痛開始から胎盤排出までの過程を含む。 |
経産婦 | 出産経験のある女性。初めて出産する初産婦と区別される。 |
注意事項
📌本記事は医療専門家によるものではなく、一般的な情報提供を目的としています。
治療内容については、必ず医師や専門家にご相談ください。